2014年10月30日木曜日

欧米市場におけるおオンラインゲームレギュレーション

◆総括
USは、入り口はFreeなので、その後は自己責任でどうぞといったスタンス
EUは、ダウンロードの前に、このゲームは結局いくら払わなければいけないかも全部明示せよといったスタンス
(USはEUに比べて団体規制は強くないが民事訴訟が多いので、そのリスクは考慮すべき)


◆欧米用FTP(無料ゲーム)モデルにおける法的問題点
  1. 子供による無断購入
  2. 子供向けの広告
    • 欧州:子供を対象とする広告は、多くの国で違法
    • 米国:一般的には問題となっていない(訴訟は多い)
  3. 子供からの情報収集
  4. 誤解を招くおそれのある広告

◆米国
  • 米国規制の焦点
    • 費用に関する明確な情報
      • 連邦取引委員会(FTC - Federal Trade Commission)の指導
        • 料金に関する「明確で目立つ」情報が必要
        • 料金やその他の条件は、IAPの「購入」ボタンなどのプレイヤーの決済直近に提示する必要がある
        • 携帯電話の小さい画面用には、簡略でわかりやすい情報公開が必要
          • 数年前からリンクを貼るだけでは不十分になったらしい
    • 子供から個人情報を収集するすることを禁止
      • COPPA(Children's Online Privacy Protection)
        • 13才以下の子供から個人情報を収集するには親の同意を得る必要あり
          • 対象となるゲーム
            • プレイヤーが13才未満であることが実際にわかっている場合のあらゆるゲーム
            • 子供向けゲーム
              • いかなるユーザーからも情報を収集するには親の同意を得なければならない
            • 子供を対象としていないが、子供が興味を持つ可能性のあるゲーム(近年対象に加わった)
              • 情報を一切収集しない、もしくは情報を収集する前に年齢を確認する(年齢ゲート)
          • 情報に関して
            • クッキー、UDID、MACアドレスが含まれる
            • 広告ネットワーク、ゲーム内の他の第三者の活動に関しても責任は問われる
            • 個人情報
              • 氏名
              • 連絡先情報:email、実際の住所
              • 写真
              • 位置情報(地区名)
      • COPPA対策アドバイス
        1. 個人情報保護方針(Privacy Policy)が必要
        2. 利用条件(Terms of Use)に子供は不許可と明記する(あまり効果はないらしい)
        3. 年齢を確認する際にフェイスブックやiTunesなどに頼らない
        4. 広告の活動を確認する(最終責任はアプリ出す側になるので)
  • 米国進出向けアドバイス
    1. 米国向け利用条件と個人情報保護方針が必要
    2. ゲームが明らかに「子供向け」の場合、親の同意を得る仕組みを用意しなければならない。そうでない場合は、年齢ゲートが必要となる可能性がある
    3. IAPには、現実の通貨が必要であることがアプリストアの説明に明確に述べられていることを確認する
    4. IAPの内容は明瞭に説明されている必要がある
 
 
◆欧州
  • 欧州規制の焦点
    • 子供へのマーケティング
    • 誤解を招くおそれのある広告
  • EU指導(EU Directive)
    • 消費者権利指導(Consumer Rights Directive)、2011年(2014年6月施行)
      • 仮想アイテムや仮想通貨を返品する権利提供
        • 14日間の返品期間
        • 返品には、いかなる理由も不要
        • ただし、ユーザーが同意する場合には返品を回避できる
          • 「同意」が何かは明確に示されていないが、おそらくチェックボックスまたは、ユーザーが肯定したと判断できる動作
      • プレットフォームの購入ページにゲームに関する詳細情報提供
      • 費用や価格に関する具体的な情報提供
      • パブリッシャーに関する具体的な情報提供
    • プライバシー指導(Privacy Directive)、2009年
    • 子供のオンラインゲームに関する英国のレポート、2013年
      1. 「ゲームに関連する費用についての情報は、明確かつ正確で顕著なものであって、消費者がそのゲームをプレイ、ダウンロード、申し込みを開始する前、また購入することに同意する前に、提供されるべきである」
      2. 「ゲームに関するすべての重要な情報は、明確かつ正確で顕著なものであって、消費者がそのゲームをプレイ、ダウンロード、申し込みを開始する前、また購入することに同意する前に、提供されるべきである」
      3. 「ビジネスに関する情報は、明確かつ正確で顕著なものであって、消費者がそのゲームをプレイ、ダウンロード、申し込みを開始する前、また購入することに同意する前に、提供されるべきである」
      4. 「有料コンテンツのゲーム内プロモーションや、他の製品またはサービスの販売促進の商業意図は、ゲームプレイから明確に区別可能であるべきである」
    • 欧州委員会会議、2014年2月
      1. 「無料」と広告されたゲームは、実際に関連する費用について消費者に誤解させるべきではない
      2. ゲームはゲーム内で子供にアイテムを購入することや、大人に対して子供のためにアイテムを購入するよう説得することを、直接的に推奨するべきではない
      3. 消費者は購入のための支払い手続きについて十分に知らされるべきであって、消費者の明示的な同意なしにデフォルト設定で引き落としがされるべきではない
      4. 消費者が質問や苦情がある場合に連絡できるよう、ゲーム出版社は電子メールアドレスを提供する必要がある
  • 消費者団体による行動
    • ヨーロッパで最も活発:VZBV(Verbrauchenzentrale Bundesverband)ドイツ
      • パブリッシャーに対する訴訟の脅威
    • VZBVのクレーム例
      1. ゲームは「無料」と広告されているが、実際には長くプレイするには料金を払う必要がある
      2. 法的事項は小さな携帯のスクリーンで読むには長すぎてよく見えな
      3. ゲームパブリッシャーに関する必須の情報はゲーム内に表示されなければならない
      4. 料金の支払いをせずにゲームを先に進めるには時間がかかり過ぎる
      5. ゲーム内のIAP広告に向けられたものである(子供への直接的な説得は禁止)
      6. プレイヤーはゲームについてツイートするのと引き換えに無料のアイテムを受け取っていることを明示しなければならない(子供向けに、ツイートを商品獲得のためにさせた場合、それは他の子供を騙すことになりかねないため)
  • 欧州進出向けアドバイス
    1. 欧州向け利用規約と個人情報保護方針が必要
    2. 返品権利放棄を含める(これは一度最初に確認すれば、あとずっと有効ということではなく、毎回商品毎に確認する必要があるらしい)
    3. IAPには、実際の通貨が必要であることがアプリストアの説明に明確に述べられていることを確認
    4. IAPの内容は明瞭に説明されている必要がある
    5. IAP画面では「子供っぽい」言葉遣いを避ける(子供向けと取られかねないため)

2014年10月28日火曜日

日本の二重国籍

◆結論
二重国籍は禁止されてはいない
- 外国籍を持つ場合、喪失する場合がある


「国籍法」



◆多重国籍者の国籍選択制度 日本の国籍の選択の宣言をした者は、外国の国籍の離脱に努めなければならないという努力義務規定がある(第16条第1項)が、後述するように、その国の国籍が必要な外国の公務員となった場合に、日本国籍を失う可能性があるだけで、外国籍を離脱しないことについての罰則もない。その結果、主に出生地主義の国で生まれた重国籍者が多数存在すると思われるが、実態は明らかでなく、国政選挙権も含めて、日本国籍だけを有する者と平等に扱われている。”


「国籍法」 - wiki



◆法務省の表現 ”外国の国籍と日本の国籍を有する人(重国籍者)は,22歳に達するまでに(20歳に達した後に重国籍になった場合は,重国籍になった時から2年以内に),どちらかの国籍を選択する必要があります。選択しない場合は,日本の国籍を失うことがありますので注意してください。”

「国籍選択について」法務省
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html


◆在アメリカ合衆国日本大使館表現 ”なお、日本国民が自己の志望によって外国の国籍を取得した場合は、本人からの届出がなく日本の戸籍簿から除籍されていなくとも、日本の国籍法の規定により日本国籍を失うこととなっていますので、日本のパスポートを取得・行使することはできません。また、在外選挙人名簿登録の資格はありません。”

「国籍関係「国籍喪失届」在アメリカ合衆国日本大使館
http://www.us.emb-japan.go.jp/j/kokuseki/k_soushitsu.html


◆ノーベル賞中村氏は日本人か否か 国籍喪失者が、国籍喪失により失効したはずの手元のパスポートを使うのは、旅券法により5年以下の懲役か300万円以下の罰金か両方の罰則があります。しかし、旅券法でも罰則のみで国籍を剥奪できず、戸籍が残っていれば日本政府は国籍喪失から判定する必要がありますが、この判定制度は存在しません。

これまで外国籍取得者がパスポートを使ったことで、旅券法違反で起訴されたことは確認されていません。つまり、「外国籍取得時点で日本国籍を喪失」という解釈への司法判断はおりていませんし、起訴しない当局もこの判断に触れることを避けているようです。”

「二重国籍の実態:「ノーベル賞中村氏は日本人」とする安倍首相、「日本国籍を喪失」とする日本大使館」
http://www.huffingtonpost.jp/uniuni/person-with-dual-nationality_b_5969438.html

2014年10月6日月曜日

「老後破産」200万人の衝撃第1部という記事について

現代ビジネスにこんな記事がのっていた、
「老後破産」200万人の衝撃第1部 普通のサラリーマン」だった私は、定年からたった10年で破産した 70過ぎて、食うモノに困るとは……」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40603


それが社会的な構造による問題であれば、老後破産は大きな問題だし、議論、改善していく必要があるだろうと思う。
真面目にきちんと生きてきた普通の家庭が、制度上の闇に飲み込まれ、破産に追い込まれる。それなら議論の対象として納得がいく。
ただ、この記事に関しては特殊な例を引き合いに出しすぎで、読んでいて釈然としないものを感じたので、それらについて思ったことを。

■香川庄治さん(仮名/71歳)のケース

・食品メーカーに38年勤務
・60歳で退職
・退職時の貯金は約3,200万

記事によると、現在貯金が底をついた主要な理由は2つ。

1. 闘病コスト
2. 40代息子が引きこもり

まず、闘病についてだが、妻のガンが発病したのは定年から半年後、そして亡くなったのは6年前とのことなので、闘病生活は約5年半。
がん保険に入っていないために「みるみる3,000万円が6年で目減りしていった」と書かれているが、「病院を転々とし、最新の放射線治療も受けました。それに漢方や健康食品など、身体にいいと聞いたものは何でも試した」とのことなので、これは保険に入っているかどうかはあまり関係がない。
「300万円出して車椅子を乗せられるワゴン車を買い、がんに効くと言われる温泉にも連れて行った」とのことだが、残り2,700万(みるみる3,000万がと書いてあるので、3,000万分を闘病で失ったと仮定)を66ヶ月(5年半)で消費。月約40万9千円必要だったことになる。

保険に入っていない場合でも、高額療養費が制度としてあるので、50万の医療費でも(保険の効く医療であれば)10万円はかからない。
よほど民間療法や保険未適応の先進医療に高額の支払を続けた可能性が高いが、医療費に関するそういった破産は老後に限らず起こりうる。もちろん確率として老後のほうが、医療問題による出費を余儀なくされる可能性は高くなるだろうが、これは構造的な老後破産の問題と直結しているのだろうか?
もしくは、医療制度で高額を支払わなければ治療を続けられないという問題があるとすれば、それは医療問題の話ではないのだろうか。
もう少し、この実施した医療について詳細を述べてほしかった。(勿論、そうすると老後破産から論点がずれるから、そうしなかったのだろうが)

また、引きこもりの問題についてだが、内閣府の調査によると、15~34歳の広義の引きこもりは推定70万人、平成24年度の調査で2.3%。
http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h25honpen/b1_04_02.html

引きこもりの子どもを抱えた状態で、親がどう自身の生活を保っていくかというのは、確かになんらかの救済が必要な問題にはなってくるだろう。
これが老後破産のひとつの引き金になり得るというのは理解できるが、むしろこれを一般化すると、老後における他者介護の問題とも捉えられる。
高齢な父母が、中高年の子どもの介護を行わなければならない状態において、どういった保護が出来るか、この部分はもっと深掘りしてもよい気はする。


■小野雅俊さん(仮名/69歳)のケース

・都内建築事務所の正社員を定年まで
・退職時には、退職金を含めて4,000間円程度の資産があった

こちらの生活が困窮した理由は明白

1. 息子の起こした100%加害責任のある交通事故
2. 保険に入っていなかった

こちらは、老後破産となんの関係もなく、あらゆる家庭に起こりうる問題。
だからこそ、自動車保険への加入が勧められる。
保険加入は忘れていた、では済まされない。


また他のケースも、お金の使用を管理出来なかった、もしくは息子の会社が破産した、などある程度自己責任を伴うケースが、あたかも社会問題かのように紹介されている。

「子どもも離れて暮らして」おり、認知症を原因とする「判断力の低下による無駄遣いや保険の使えない鍼治療など」という、周りの助けが少なく、かつ消費が多いという問題。もちろん、これは自分の面倒を見てくれる子どもがおらず、自己判断できなくなった場合はどうするか、という問題はあるが、無駄遣いしたあげく困窮するというのは、社会的問題とは言い難い。誰しも資産は有限である。使いすぎれば困窮するのは致し方ない。最初の香川さんのケースも、無駄遣いとは言えないが、身の丈を越えた医療費の支出は、やはり当然自分に返ってくる部分はあるだろう。

息子の収入を当てにして、高額のローンを組んだ場合、当然そのリスクは事前に認識して、息子が死亡した場合、収入が激減した場合などに備えた準備はする必要は老後問題以前にあるのではないか。

いずれも、対応策がない構造的問題というよりは、ある程度自己責任の部分があり、これを社会問題としてとりあつかうには、いささか過剰に感じる。

むしろ、こういったある程度お金があって(使わざるを得ない理由により支出が増大し)困窮に追いやられたというドラマチックな事象を取り上げてむやみに不安を煽るより、現実に収入問題があり、そのまま貯金もなく老後を迎えてしまった人たちの窮状にこそ老後問題にこそもっと焦点を当てて欲しいと思うのだが。

窮状は、窮状そのものより、窮状に至る過程にこそ、問題が隠されている。
そこを蔑ろにして、徒に恐怖を植え付けるやり方は辞めて欲しいものだ。